Rikuto Ishimoto

歴史が沈む町、パルミラ

シリア パルミラ遺跡

首都ダマスカスから東へと進むバスに、私は乗っていた。見渡す限りの荒野。これぞシリアという景色だ。チケットは少しぼったくられた気もするが、まあいい。このような国では、安全に目的地に着くことができるだけで十分だ。 町はずれのバス停から宿に向かって歩いていると、一台のおんぼろタクシーが止まった。タクシーに乗らないかということだった。戦火の末に荒れ果てた町でタクシーに乗る人間などいるのだろうか。自分が久々の客だったのかもしれない。 この町にかつて存在していた数軒のホテルは、戦争を経てすべて廃墟化していた。この町で宿泊する手段は、地元住人が運営する二つのキャンプのみだ。ネット上で何とか情報を手に入れた私は、そのうちの一つに転がり込んだ。 荷物を置いた後、荒野の砂を巻き上げて吹く暴風の中、私は遺跡へと向かった。2000年以上前に栄華を誇ったこの町も、今では無残に破壊されている。その破壊の一部は、近年イスラム国によって行われたものだという。イスラム国が処刑台として使ったという劇場にも足を運んだ。かつてはパルミラの住民たちが誇りにしていたであろうその美しい劇場は、今でもその形をなんとか留めている。 次の日は良く晴れた一日だった。朝日に照らされた遺跡は、昨日とはまた違う姿を私に見せた。パルミラは長い歴史の中で荒れ果てた姿になってしまったが、今この目で見ている太陽だけは、昔と変わらないいのだろうと思った。かつてのパルミラ人たちはこの太陽を見て何を考えたのだろうか。そんなことを考えながら、遺跡を後にした。

歴史が沈む町、パルミラ
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